ダーティ・シークレット――タックス・ヘイブンが経済を破壊する

これは、朝日新聞の書評で取り上げられていた。「守秘法域」という新たな観点でタックス・ヘイブンを取り上げているというのがその要旨だった。目次はこんな感じ謝辞／はじめに第1章 タックス・ヘイブンの物語第2章 秘密主義の問題第3章 タックス・ヘイブンとは何か第4章 タックス・ヘイブンの世界第5章 タックス・ヘイブンのコスト第6章 タックス・ヘイブンに立ち向かう第7章 タックス・ヘイブン後の世界注／付録1 金融秘密度指数／付録2 タックス・ジャスティス・ネットワークの評価基準／付録3秘密度指数ランキング／索引私には、捉え方の問題よりも、タックス・ヘイブンをどうすれば無くせるか。また、そのために取り組んでいる人たちや方策の方に興味がいったし、その点で有益な本だと思った。秘密性ということを問題にした時に、重要なことは、例えば、付録1の金融秘密度指数で、日本が12位にいるということ、金融庁はこの問題に直ちに取り組むべきだ。本書で度々論じられているのは、タックス・ヘイブンの利用は、脱税ではないが、それと同等かそれ以上の害悪を流している。世界の民主主義を損ない、健全な資本主義を損ない、政治不信を招いている。その根底に、守秘法域という情報を開示せず秘密にすることで不当な利益を得るという活動があることを述べている。その意味では、ReichのSaving Capitalismなどとも同じことを話題にしている。格差であり、富者の堕落であり、このような活動を支える高度に知的な一群の人々。。。。第6章 タックス・ヘイブンに立ち向かうに述べられる解決策も極めて簡明だ。世界企業に対しては、世界企業単一の資産、所得に対して、課税すべきであると。そして、その法域別活動（資産、収入、経費その他）に応じて、課税所得、課税資産を分配する。各法域は、それぞれの法域の税制に従って、課税すれば良い。会計検査、会計報告も、世界企業として、単一の報告書を作成すれば良い。極めて単純かつ合理的であり、なぜこれが行われないか、理解に苦しむ。更に興味深いのは、「第7章 タックス・ヘイブン後の世界」に示される様々な効用。例えば、優秀な人材がタックス・ヘイブンに関わる業務から解放される。お金目当てに束縛されていた優秀な人材が開放され、より有益な業務に着くことによって、未来の可能性が開ける。教育が政治と無関係ではオレないことがよく示されている。現在の、政治経済その他の問題解決に欠かせない処方箋だ。